- 1. 在留の権利は「当然の権利」ではありません
- 2. 外国人が日本に滞在するまでのステップ
- 3. 在留資格認定証明書(COE)と「申請取次」の役割
- 4. 在留資格の「肝」を理解する
- 5. 最後に:ルールを守り、適切なビジネスを
行政書士の業務のひとつに「国際業務」があります。これは、日本に滞在する、あるいはこれから滞在したいと考えている外国人の方に関する手続きをサポートする業務です。
そもそも「外国人」とは、出入国管理及び難民認定法において「日本国籍を有しない者」と定義されています。私たち行政書士が主に取り扱うのは、3か月以上の中長期の滞在を希望する外国人の方の、紛争性のない在留資格に関する諸手続きです。
1. 在留の権利は「当然の権利」ではありません
まず大前提として、外国人が日本に在留するためには、原則として「在留資格」が必要です。ここで非常に重要な判例をご紹介します。「マクリーン事件」の最高裁判決です。この判例では、「外国人の基本的人権は認めるものの、日本に在留する権利は保障されておらず、在留更新は国の広範な裁量に委ねられる」という点が示されています。
つまり、日本にいることは当たり前の権利ではないということです。そのため、在留資格を申請する際は、あくまで「許可をいただけますでしょうか」という謙虚な姿勢が、手続きのうえで非常に大切になります。
2. 外国人が日本に滞在するまでのステップ
外国人が日本に来るまでには、明確なステップがあります。
- 入国:日本の領土、領空、領海に入ること。
- 上陸:空港などの出入国港での上陸申請。パスポート(旅券)とVisa(査証)が必要です。
- 在留:許可を得て日本に住むこと。
- 出国:日本を出ること。
入国審査では、入国審査官が「上陸のための条件(入管法7条1項)」に適合しているかを厳しく審査します。虚偽がないか、産業や国民生活に影響がないか、上陸拒否事由(1年以上の拘禁刑、麻薬関連、売春・斡旋等)に該当しないかなどを確認し、適合と認められればパスポートに上陸許可の証印が押されます。
3. 在留資格認定証明書(COE)と「申請取次」の役割
手続きを効率化するために活用されているのが「在留資格認定証明書(Certificate Of Eligibility、通称COE)」です。従来の窓口申請において発行された紙の証明書の他に、現在はオンライン申請が可能となり、手続き後に発行されるメール自体がCOEとなっています。
行政書士は、このCOE取得などの手続きを「申請取次」としてサポートできます。これは単なる代理人ではなく、「申請取次行政書士」という特別な資格を持つ者が行える業務です。教育を受け、行政書士会を通じて地方出入国在留管理局長に届け出た行政書士のみが、入管への出張や手続きをスムーズに行うことができます。
なお、国際業務を扱う行政書士にとって、入管に足を運ぶことは基本です。行政庁はルールを最も知っている場所です。不明点があれば恥ずかしがらず、面倒がらず、直接確認に行き、経験値を高める努力が必要です。
4. 在留資格の「肝」を理解する
行政書士が依頼を受ける際、最も重要視しているポイントがあります。ここを間違えると、最悪の場合「不法就労」を助長することになってしまいます。
- 在留資格がないと、原則日本には住めません。
- 日本で行おうとする活動が、認められた「在留資格」に該当しない場合、資格を得ることはできません。
- 許可された活動以外は、原則として行ってはいけません。
企業の方から「どんな仕事なら外国人にやらせられるの?」という質問をいただいても、「あなたが具体的にやらせたい活動は何ですか?」と必ず確認することが大切です。活動内容によって適切な在留資格は異なり、これを間違えると後のトラブル、更には「不法就労」に繋がる可能性が高まります。
在留資格の分類
在留資格は、大きく「活動系」と「身分地位系」に分かれます。
1. 活動系在留資格
特定の活動を行うための資格です。
- 就労資格(許可基準あり):技術・人文知識・国際業務、経営・管理、高度専門職、特定技能、技能実習など。私たち行政書士が最も多く関わる分野です。
- 就労資格(許可基準なし):外交、公用、教授など。
- 非就労資格:留学、家族滞在(扶養する配偶者・子など)、短期滞在など。
2. 身分又は地位系在留資格
日本での活動に制限がありません。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などがこれに当たります。また、帰化という選択肢も存在しますが、この選択により母国の国籍を失うことになりますので、本当にその選択でいいのかを改めて確認し、慎重な選択を促す必要があります。
5. 最後に:ルールを守り、適切なビジネスを
国際業務は、手続きの正確さが何よりも求められる仕事です。特に「偽装結婚」や「意図しない不法就労」などを防ぐための審査は厳格です。
これから外国人の雇用を考えている経営者の方、日本での滞在を目指す外国人の方は、専門家への相談を強くお勧めします。適正な手続きを行うことが、日本での安心した生活やビジネスの発展への近道です。どんな小さなお悩みでも、まずは一度ご相談を。
